「衣更着(きさらぎ)」の重なりを楽しむ。香りと布地で心に温度を灯す方法

暦の上では春が始まる2月ですが、実際には一年の中でも寒さが一段と厳しくなる時期です。和名で「如月(きさらぎ)」と呼ばれるこの月は、寒さを凌ぐために衣をさらに重ねて着る「衣更着」が語源の一つとされています。この「重ねる」という行為を、単なる防寒としてだけでなく、五感を満たし、心を整えるための豊かなエッセンスとして捉え直してみるのはいかがでしょうか。布地の質感、季節の香り、そして日々の習慣を丁寧に重ねることで、凍てつく空気の中に温かな光を見出す暮らしを提案します。

触覚で感じる「衣更着」の季節。素材の重なりを日記に綴る

2月の暮らしにおいて、最も肌に近い場所にあるのが「布地」です。ウールの厚手のニット、カシミアのストール、そして春を待つリネンのシャツ。これらの素材が肌に触れた瞬間の感覚を、意識的に味わってみることから整え方は始まります。ウールの弾力のある温もりは安心感を与え、リネンの少し硬質で清涼感のある手触りは、遠くにある春の気配を運んできます。

こうした日々の「触覚」を、短い日記に書き留める習慣を持つこともおすすめです。「今日は冷え込みが強かったので、目の詰まったウールの靴下を選んだ。その重みが心地よい」といった、素材と自分の感覚との対話を記録することで、無意識に過ぎ去る一日に輪郭が生まれます。素材の重なりを楽しみ、その時々の心地よさを選ぶことは、自分自身の内面を丁寧に扱うことにも繋がります。お気に入りの布地に包まれる充足感は、寒さで強張りがちな心と体を優しく解きほぐしてくれるでしょう。

嗅覚で春を呼び込む。蝋梅の香りと装いのコーディネート

冬の澄んだ空気の中で、ふわりと漂う甘く清らかな香り。2月を象徴する花の一つである蝋梅(ろうばい)は、まだ色の少ない景色の中で、春の訪れをいち早く嗅覚に届けてくれます。この季節ならではの香りと、その日の装いをリンクさせる「季節のコーディネート」を楽しんでみてはいかがでしょうか。例えば、蝋梅の透明感のある黄色をイメージした小物を身につけたり、その香りに近いフレグランスをマフラーの端に忍ばせたりする。視覚と嗅覚を重ね合わせることで、季節との一体感が高まります。

また、2月の後半には桃の花の香りを生活に取り入れるのも良いでしょう。桃の香りは、既存の人間関係を温め、穏やかな調和をもたらすと言われています。お香やエッセンシャルオイルで室内に香りを満たしたり、食卓に桃の花を飾ったりすることで、家の中の空気も春めいていきます。香りをレイヤードするように、季節の花々を暮らしに招き入れる。それは、目に見えない「時間の流れ」を愛おしむための、最も贅沢な方法かもしれません。

那須の自然に学ぶ、寒さの中で「春の兆し」を見つける感性

厳しい冬が続く栃木県・那須の地で活動するクリエイターの暮らしには、感性を整えるためのヒントが溢れています。雪深く、静寂に包まれる冬の那須では、人々は小さな変化に敏感になります。凍った地面の下で静かに準備を始める芽吹きや、光の角度がわずかに変わる瞬間。これらを「春の兆し」として捉える感性は、慌ただしい日常で見落としがちな大切なものを思い出させてくれます。

那須のクリエイターたちが実践するように、特別なことではない「日々の感覚」を整えることを意識してみましょう。例えば、朝の冷たい空気の中で深呼吸をし、肺に届く感覚を確かめる。あるいは、窓辺に置いた植物の葉が光を透かす様子をじっと眺める。こうした「静」の時間は、外側の寒さに振り回されない、揺るぎない自分を作るための処方箋となります。寒さを否定するのではなく、その中にある静けさや美しさを発見しようとする姿勢こそが、心を健やかに保つ鍵となります。

暦のリズムを整える。2月の吉日と日常のささやかな習慣

2月は「立春」や「雨水」など、季節の節目となる二十四節気が訪れます。2月4日の立春は、すべての始まりとされる重要な日です。この時期には、節分の豆まきに代表されるように、邪気を払い、新しい運気を迎え入れる準備を整えましょう。大豆を食べる習慣は、体内のリズムを整えるだけでなく、古くから厄除けの効果があると信じられてきました。炒り大豆や納豆など、日常的な食材を通じて季節の行事を取り入れることが、心身の安定に寄与します。

さらに、2月の吉日を活用して身の回りのものを新調するのも一つの方法です。特に2月24日は、金運や芸術、美を司る弁財天の加護が強い「己巳の日(つちのとみのひ)」にあたります。この日に、職場の人間関係を円滑にするための新しい靴下や手袋を使い始めたり、蛇モチーフの小物を身につけたりすることで、気持ちに新しい風を吹き込むことができます。また、2月19日の「雨水」の頃に雛人形を飾ることは、良縁を招く伝統的な習慣です。暦が刻むリズムに合わせて行動を選択することで、暮らしの中に自然な調和が生まれます。

まとめ

「衣更着」の季節である2月は、素材や香り、そして暦の知恵を重ねることで、寒さを豊かさに変えることができる時期です。ウールの温もりに癒やされ、蝋梅の香りに春を予感し、那須の自然が教えてくれるような繊細な感性で日常を見つめ直す。五感を使って丁寧に「今」を整えることで、心には確かな温度が灯ります。春の本格的な訪れを待つこの時間を、自分自身を慈しむための大切な準備期間として過ごしてみてはいかがでしょうか。

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